村主『OUT』

 書き出しは、いちばん普通の小説っぽかった。


 (ネットで知り合ったアイドル好き仲間と都会の駅で待ち合わせるというシチュエーションがチョット個人的な経験とオーバーラップして、フラットに読み進めることができなかったのだが。)


 リスペクトし合える人間とついに巡り合えた、のも束の間、とんだ外道だった。
 ソウルメイトになれるかもしれないと期待していた反動もあってか、非道な行為を嬉々として語られパニックに陥る主人公の心中を察するに余りある。


 裏切られた後の主人公の描写で惹かれたのは「チェーン店」。
 ユニバーサルサービスに頼ることで極力 心を無にしたいという思いが伝わってきた。


 やがて、いや、ついに“路上の深い溝”に差し掛かる主人公。
 存在するかどうかも定かでない作業員を相手に正義感を発揮し、無意識下にあの外道を否定することで心の平静を保とうとしたのだろうか。
 そして、転落−−−。
 どこまでも浮かばれない。
 5作目にして、とうとう主人公が実害を被ってしまった。(それにしたって自分で勝手に、なのだが)
 「あっ!?」のひと言にいくつもの自己嫌悪が込められているような気がした。
 読後感は、非常ににがい。


 うまくまとまらなかった。