村主『ブラジルの季節』

 まず、喫茶店の描写が好きだ。
 「二十代の店員の女」の存在を筆頭とした、“喫茶店を構えること”がゴールだったんじゃなかろうかと思わせる、行き届いていない店内。
 中でもバンジョーや消臭元といったディテールが色を決定付けている。
 無論、アイテムのチョイスばかりではなく、「同じところばかりを拭いている」だとか「ケンカするように」といった表現にこそ妙味を感じさせられたのだが。


 劇団員に関しては、「女をガンタイプの赤外線サーモグラフィで観察する集団」という冒頭の紹介がもう入口であり出口であり、それ以外の何物でもなかった。
 義憤に駆られて(笑)走り出した主人公が一番どーしよーもない奴で。
 やがてラストシーン、そんな主人公の身に及んだどーしよーもないシチュエーションと、唐突すぎる文学的で高尚なロウソクの表現。
 二者のギャップが物語のコクを一等深めたところで、サッと幕を引かれる。


 全体を通してサブカルマンセーな若者が好みそうなテレ東系深夜ドラマのセットのような光景が浮かんだが、チョット違う気もする。
 仮に映像化されたらものすごく琴線に触れるシーンになるかもしれないし、箸にも棒にも掛からない駄シーンになるかもしれない。
 そんなことを思った。


 そんな傑作。